2015年6月27日Updated
熱によるトラブル
R35 GT-RのGR6トランスミッションは、35 GT-Rは真夏の都心で110℃を超えたり、サーキット3週ほどで限界の140℃を超えてしまうくらい、純正の熱対策は貧弱です。トラブルのほとんどはこの発熱が原因と思って良いでしょう。
発熱によるトラブルは以下のような問題が考えられます。
1.オイルシールの硬化・破損
オイルシールが硬くなり、一般的な圧力でも耐えられず敗れてしまいます。
また、社外の強化品を入れても、同じ現象を起こす場合があるので、いい加減に作られた強化製品よりは、中古の純正を使った方がマシです。
2.熱によるソレノイドの故障
高熱でソレノイドの内部の磁石が弱まってしまい、バルブの動きや油圧の制御が正常じゃなくなり、バルブの位置が基準範囲から外れたら直ぐ故障コードを出して走行不能になります。
この場合でもバルブボディやポンプのソレノイドの交換で治ります。
ですが、日産はこのパーツを外部に売ってくれないため、メジャーなチューナーでもパーツ取りのミッションから正常に動くパーツを取って大事に再使用したり、品質に不安がある社外品を使わざるを得なくなっているのが事実です。
日産はミッションに関する全てのトラブルについて、「ミッション丸ごと交換で300万円」と言う無責任な態度のままです。GR6は800psまでも耐えてくれる丈夫に作られたものでは有りますが、もう他のメーカーのDCTと比べて特別とは言えない、一般的なものとなりました。
なのに、ゴムのシールの破損による単純な故障でも、「300万円」と言ってくるのは、どうも納得いかないですね。
解決案
追加のDCTクーラーをつける
高粘度のミッションオイルによるトラブル
1.1速とRの入りが悪くなる
これはギアの保護ばかり考えて、純正より
高粘度のオイルを入れる時、頻繁に起こります。
自分を含めて3台のR35がMo**sのミッションオイルを入れてからこのトラブルを経験しました。純正及び純正に値する粘度のオイルに変更して3台とも直りましたので、間違いないと思います。
2.ミッションやエンジンオイル温が上昇してしまう。
高粘度オイルは抵抗によって流速が遅くなり、流量も減ってしまうため、必然的に温度が上がってしまいます。
解決案
純正か純正と同じ粘度のオイルを使う。
短期燃調(STFT)の悪化による変速ショック
R35はECUに、DCT変速時の基準テーブルを持っていて、エンジンが変速タイミングで出力を判断して何Nmでクラッチを締結するかTCMに要請するようになっています。
ですが、短期燃調が大きく外れると、要請トルクと実際のトルクの間の誤差が大きくなり、その分変速ショックが大きくなってきます。
短期燃調(STFT) |
125% | Bad |
110% | Not bad |
105% | |
100% | Good |
95% | |
90% | Not bad |
75% | Bad |
100を基準として上は薄い(Lean)、下は濃い(Rich)状態です。
全負荷時の時、短期燃調が+-5%以内に収まると、変速は非常にスムーズな状態になります。
吸排気が純正のままの場合にはこの範囲内になっています。
+-5~10%以内になると、多少のショックを感じます。
+-11~25%になると、変速ショックは付き物となります。
全負荷時+25%はかなり希薄な状態で、エンジンブローの原因にもなります。
では、どういう時に短期燃調が外れるのでしょうか。
1. COBBの基本データをそのまま使っている
2. 現車マッピングの時にMAFキャリブレーションを行っていない
3. 吸排気を変更したのにMAFキャリブレーションを行っていない
そう、吸気フィルターを変更するくらいでも、かなり変わってきてしまうのです。
これは、HKSの純正交換タイプのフィルターと、パイピングキットだけを入れたR35の短期燃調です。普通にやっている吸気チューンですが、これだけで113%を超えているのが分かります。勿論ギクシャク感もそれなりに有ります。
エアクリーナーボックスを撤去したり、強化燃料ポンプに変更したりすると、誤差はもっと大きくなってくるので、MAFキャリブレーションは必ず必要になります。
無視するとどうなる?
クラッチの減りが激しくなり、ギクシャク感がどんどん酷くなって行きます。
出力によって異なりますが、10,000~20,000kmほどの走行で、クラッチのOHが必要となって来ると思います。
MAFキャリブレーションをするとどうなる?
この車は強化ポンプ、純正交換フィルター、パイピングを入れていて20%以上外れていたのですが、キャリブレーション後には+-3%以内に収まってくれているのが分かります。
変速ショックが大きい場合は、短期燃調をモニターリングしてみましょうね。
ミッションOH時には、ミッション強化や油圧アップも行おう。
ブーストアップ以上で、ミッションOHが必要になってきたら、以下の作業も行った方が良いです。
1枚の追加により、クラッチにかかる負荷が分散され、耐久性がよくなります。
変速がより素早く、スムーズになります。フィーリングだけではなく、耐久性にも影響します。
ただ、この架空がマトモに出来るショップは限られているので、良く確認した方が良いと思います。いい加減な架空をすると、油圧関連の色んなトラブルに会いますので、検証されてないショップでは絶対しないこと。
その他の細かいトラブルと豆知識
油圧シールの組み立て不良による破損
たまに発生しています。ほとんどが1万km以内で発見されるため、ミッションのアッセンブリーごと交換してもらえます。
Gear position select pistonのコーティング損傷や鉄分の蓄積でACMが作動不良
蓄積された鉄分がピストンのコーティングを剥がして、その隙間にまた鉄分が浸透して、最悪の場合ピストンの固着が起こって、変速出来なくなるトラブルが発生します。
対策
ミッションオイルの交換の度にピストン部を分解し、きれいなオイルに沈ませて内部を洗浄、鉄分を磁石でとり、ピストンを検査して僅かな剥がれが有る場合は軽く練磨して直してもらいます。
最悪のパターンを経験したチューナーの場合は、オイル交換の度にクリーニングするようにお勧めしているのですが、サーキット走行などが無いのなら、オイル交換3回にクリーニング1回くらいの割合で十分かと思います。
参考として、NHPCはクリーニングについて「要らない」という立場です。
実際のクリーニングを見させて頂きましたのですが、2万kmでも鉄分はそんなに無いものの、意外と一個のピストンのコーティングが若干剥がれていて、軽く練磨して上げました。
Gear position select pistonの回転防止用のクリップ(純正対策品)の挿入
シフトソレノイド側のシフトフォークに異常摩耗やが発生、振動によってピストン(ソレノイド)が回転し、磁気センサーが位置を読めなくなって、6速が入らなかったり、6速からギヤが抜けなくなって偶数段が入らなくなったりします。
2009年末のモデルからはこのクリップが追加されていますが、East Asiaモデルは表面的な年式と生産時期が一致しないため、注意が必要です。
日産純正のパーツで、品番は32886-KB50Aです。
上記の写真が装着された状態で、クリップは真ん中のゴールドの四角のものです。
NHPCの整備士でもその事実を知らない場合があるので、ミッションオイルの交換の際には必ず要請するようにしましょう。
クリーニングの後、回転防止用のクリップを挿入している状態。
Counter gearのC ring離脱防止キットを装着
Input gearとoutput gearを繋ぐカウンターギヤ(フロントドライブギア)の先に装着されているCリングが外れて、カウンターギヤまでが外れてしまうトラブルがあります。新型のミッションではシャフトをもっと長くして外れないようになっています。
装着にはミッションを下ろす必要があるため、初期型のオーナーなら強化かオーバーホールの時に付けて上げればと思います。ただ純正パーツには設定が無いため、別途のチューニングパーツを購入して装着する必要があります。
原因ですが、完全に停止する前に前進と後進を切り替える時と、タイヤが空転している時のアクセルワークで破損するのでは、という意見も有ります。